掬う

いざよいながらしたためた。決して返ってくることのなかった、17歳の少女への手紙。波間にひっそり漂う泡。今も元気でやっていますか?あなたに一目会えなかったことも、後悔のひとつです。


たまに結ばれる、泡もうひとつ。
ちろちろ青い火をのぞかせ、燻り続ける。煙のように吐き続けるため息によって、闇が一層濃くなる。終わりのない逡巡と柔らかく降る春の雨。あなたが生きている今日は、それだけで素晴らしい。まるで何かの歌の詞のようで気恥ずかしいけれど、ああほんとうにその通りです。数えられる想出は微々たるもので、繋がりも絹糸のように細く頼りないもので、でもそれでも私の世界はそれだけで成り立っていたんだよ。
六月のあの雨の世界をあんなに鮮やかに見せてくれた人は他にみあたらない。
うつしみでもう一度会いたいというのは、叶わないことなのでしょうか。