三浦しをんの小説の書き出しは緻密に計算された、無駄のない前菜のようで箸が進む。あとはメインまで運ばれてくる料理をゆっくり咀嚼すればいい。『きみはポラリス』の中では「裏切らないこと」が良かった、すごく良かった。巧いなあと思う。計算して散らばせた星屑達を感性でまとめあげる。そういうのを「才能」と呼ぶのだろうなあ。あとストックがたくさんあって、さまざまな色を出せる作家っていそうでいない。エッセイは、趣味が合いそうにないので受け付けないけれど、小説の方は好きな作家のひとりだ。