それでも君は笑い続ける。何事もなかったような顔して。

あのクラスに入る瞬間の震える位の緊張と胸の動悸と心拍数の上昇は計り知れないものがあった。授業中は五月蝿いは五月蝿かったけど、思っていた程ではなかった。肩透かしをくらった感じ。先制のカウンターパンチを予想して、こっちも身構えて教室をリングにしてでも闘うつもりだったけど。あの日私と対立した一人の男子生徒は意外なほど素直で、授業も聞いて(ほんとに少しだけど)、放課後友達を通してルーズリーフの切れ端にメールアドレスを書いて渡してきた。「暇ならメールして」って。一体全体何を考えているのかわからない。ただお互い苦い思い出を共有して、同じような傷をつくった気がする。怒りに任せた行動は時が流れると羞恥の心が芽生えるのか。

好きな男の好きだという音楽をこっそり聴くのは、なんて甘美な行為なんだろ。秋の夜は濃くて深くていい匂いがして、思わず涙が出そうになるくらいだ。