ホンダの紺色のコンパクトカーを見ると、今でもびくっとする。あの助手席は、硬くてごつごつしてて、居心地が悪かった。彼女の匂いが沁みついているようで、極力背中をくっ付けないようにして座っていた。
「私に近寄らないでオーラが出ていた」高校の時に付き合っていた人は、別れた後で私の第一印象をこう語った。人よりもパーソナルスペースを頑なに守っているのは、わかっている。殊に男の人となるとそれが一層顕著になって、自分の庭が侵されないように必死だったと思う。そんな庭に、Kは無理やり入ってきた。不躾で自分勝手で、天真爛漫で、真夏の空の下すくすく育った向日葵のような奴だった。こいつは私の庭を勝手に覗いて、勝手に塀から無理やりよじ登って、勝手に花壇の回りや芝生を駆け回った。最初はその自由奔放さに腹が立っていたけれど、そのうちだんだんとそれが居心地よくなってきて、今日もやってこないかなと高い塀を見つめている自分がいた。

自由で誰にも捕らえられないような人だから、しばらくして、やってこなくなった。毎日毎日、日が暮れてもずっと待っていたけれど、もう来てくれない。わかっている。だからもうそろそろ錆付いた重く頑丈な門を開いて外に飛び出さなきゃいけないんだと思う。

うじうじしててなんていうか書いてて恥ずかしいけど、こんな気持ちだからしょうがないとおもう。(赤面猿顔真っ赤っか・・・・)