cafeparadise2004-11-28

映画館が倒産してしまうので、最後の上映会をやるらしい。

大学一回生の時、同じ般教をとっていた男の子に誘われてここの映画館に映画を観にいった。12月の半ばで街はクリスマスのイルミネーションでキラキラしていた頃。いつもなら足早に通り過ぎるところなのにその日だけは違った。
映画が終わった後、もう日が暮れていて空は群青色。空気はキーンと張り詰めているはずなのに、ちっとも寒さを感じなかった。通りは林檎のような頬をした可愛い恋人達で溢れていて、たいやきの香ばしい匂いがしていたことを覚えている。男の子と一緒にいて「うちに帰りたくないなー」と思ったのはその時が初めてだったよ。彼の着ていたトレーナーからいい匂いがして、どうしようもなく切なくなって、雑踏の中、ぎゅうとトレーナーを引っ張ってやりたい衝動に襲われたけど、何とか踏みとどめておいた。普通ならじゃあご飯でも食べようかという流れになると思うのに、お互い顔色を伺って何も言い出せずじまい。言葉少なにお城のお堀をぐるりと回って、結局「じゃあまたね」とそのまま別れてしまった。実は彼は仮面浪人生で、翌年東北の大学に行ってしまって、それ以来連絡をとっていないけれど今も元気でやっていますか?そういえばこんな子がいたなーって思い出してくれると嬉しいよ。でももう少し私に勇気があれば今とは違う未来があったとも思わないでもない。

というわけで今から思い出の映画館に行ってくる。ちょっとあんた卒論はーーーーー?いいの。いいのよ。帰ってからばしばしやるから。

帰ってきた。昭和21年開館だって、今まで本当にお疲れ様。若き青春の一ページを思い返しておられるご年配の方々が大勢いたよ。