蜜蝋

永い四月だったな。清算、クリアー、浄化、いろんな言葉を当てはめてみたけれど、ただ単にひと月休みたかっただけだ。何年ぶりかに訪れた穏やかな春だったわ。見たい映画や本、行きたい場所、欲しかった物、毎日のように洗濯をして、布団を干して、春の陽光に身を預けることがこんなにも楽しくて、心を弾ませるものだったなんて忘れていたもの。軽やかで、でも漠とした不安に憑かれていた学生の頃に戻ったような。でも今の日常は桃源郷のようなもので、いつまでもふわふわと浮かんでいるわけにいかない。にせものだとは言わないけれど、永くひたっていると危険な毒薬。

ご飯をきちんと食べて、眠り、朝日を浴びて、もりもり働いて、勉強をする。ひたむきに、真摯に生きる。